2007/07/22(日)ゲーム「ナルキッソス2」感想
ナルキッソス2は、元ねこねこソフトのエライヒト片岡とも氏のサークルステージ☆ななで無償配布されているノベルゲームです。
プレイ感想
元々、知り合いの方が音楽で参加しているということから知ってプレイしてみました。プレイ時間2~3時間ってことでしたので、ちょっとプレイするには良いかなと。 結局5~6時間ぐらいかかったのはいつもどおりでしたが(苦笑)*1
感想としては一言で表すと片岡とも氏色でした。銀色第1章とかと同じく「生と死」を本質的テーマとして、 死に逝くものを描いています。死を目前としたとき人は何を感じるのか、そこを深く掘り下げています。
ゲーム中、非常に多くの投げかけが行われるのですが、それに対する答えは用意されていません。実際問題、どれが正解とは片付けられないものがあり、煮え切らないと言えばそれは正しいのかもしれませんが、でもそこでもないところに本作のテーマはあるような気がします。
プレイしていると、とも氏は実際に死に接したことがあるのではないのかと思えて仕方ありません。少なくとも死に対して深く考えたことがないと、あれだけの言葉は出てこないと思うのです。そんなとも氏が結局何を一番描きたかったのかと考えると、死に逝く者が苦悩の末の辿り着いく場所とその瞬間(瞬間)の大切さなんじゃないかと思います。
気になったところ、細かいこと、キャスト
- エレベーターの音(SE)が電子レンジの音らしく、どうにも気になって仕方なかった。
- フリーで公開できてしまうことに驚きを感じてしまうと共に、一般流通に乗らないことの限界もあるのだなぁーと。
- 背景紙芝居という使い方もアリだなぁーと。
CAST
人物 | キャスト |
---|---|
姫子 | 柳瀬なつみ |
千尋 | 後藤邑子 |
優花 | 岩居由希子 |
セツミ | 綾川りの |
ママ | 田中凉子 |
女の子 | 能登麻美子 |
どうにも岩居さんが(声を覚えているので)気になって気になって。
片岡ともさんについて
生死のテーマもそうなんですが、真摯といいますか愚直といいますか、銀色もそうでしたが好きです。ねこねこ解散にしてもそうなのでしょうけど、いろいろ見ていてそれでいてメッセージを伝えるということに非常に苦悩しているという印象があります。銀色で感じたのは結局ともさんの表現者としての魅力でしたし、本作もやはりそういう感じです。
褒めてばかりも何なので。ナルキッソス2では生死に関する言葉をいくつも投げかけやりとりをするのですが、逆にそれが目立ち、本来もっとも描きたいことであろう最後の結末が弱く映ってしまいました。一緒に同梱されているナルキッソス(旧ナルキ)では、逆にあっさりしすぎて結末の、その重さがあまり感じられませんでした。
内容的にどうしても、銀色第1章と比べてしまうのですが、シナリオ文の上手さとしては「ナルキ2>旧ナルキ>銀色第1章」で、旧ナルキは銀色っぽさが残ってるんですが、そこいくとナルキ2は文として実にすっきりとしていて読みやすいです(くどくない)。ただ、テーマのわかりやすさとしては銀色第1章が一番かなと思います。*2
つまり。死を前にしての生の存在、苦悩の描写はそれはそれで大切なお話になのですが、ただもし(自分の解釈が正しくて)ラストシーンに主軸があるのだとすれば、余計すぎたと言わざるを得ません。絞りきれないと結局発散してしまいます。メッセージを洗練するためには、それ以外のメッセージをあまり入れてはならないのです。
しかしともさんほどの方が、そこに至らないと考えるのも不自然な話です。そう考えてみれば、焦点を絞らないことにその主軸があったのでしょうか。軸が絞られたお話というのは、結局一言で解説できる話です。人間という動物は、物事を解釈し枠にはめて咀嚼するとそれを忘れる性質があります。だからあえて咀嚼出来ないものを用意したんではないかと思うのです。
さらなる勘ぐりをするならば
『…こうして、わたしの元へと、ルールは委ねられた』
『まだ見ぬ、本来の担い手…』
『きっと、すぐに現われるのだろう』
『きっと、わたしの手を離れても…』
『いつまでも…語り継がれるのだろう…』
だから自分の手から、読んでくれた方へと委ねました。
片岡ともさんの公式BBSでの発言より
以下はかなり勘ぐりです。ルールを物語りやテーマと置き換えると、ともさんはこの手の作品はしばらくの間作らないのではないかとも思えるのです。さもなければ、これ以上のものを作ることは(自身では)不可能と感じているのではないかとも思うのです。これ以上の結論でもいいのかもしれません。
なぜねこねこが解散したのかについも諸説ありますが、こう考えるとすっきりしませんか?
とまあ
なにはともあれ面白かったです。短い作品ですので(しかも無償ですので)よかったらみなさんプレイしてみてください。自分も久しぶりにシナリオでも書いてみようかなぁ、と思った本作でした。*3
2007/02/18(日)ゲーム「処女はお姉さまに恋してる」の感想
おと姉感想。
ちびちびプレイしてたんですが、初回完了しました。貴子シナリオでしたが。
台詞回しと声
口語調になるようにものすごく工夫してあります。意味の重複や倒置、文章として不完全な日本語を使ったゲームというのは初めてみた気がします。これは台詞のリアリティでして、その辺をよく抑えてるなーと感心してしまいました。
普通3行に収まらないような長台詞を邪魔になるので途中で2つの台詞に分けてしまうのですが、このゲームでは切っていません。手抜きなのかと思ったら、声優の声を切りたくなかったらしい。私は普通、ゲームをするとき音声が遅すぎると邪魔でどんどんメッセージを送ってしまうのですが、ほとんど全編台詞を聞いてプレイしてました。
演技がうまいのもそうですが、時間と金をかけて録音しています。これだけ贅沢に間を使った声を録音しようとすると、取り直しも増えるし録音する効率も悪く、お金もかかってしまうんですが、そこがすごい気合い入ってるというか。君望とかも声には気合い入っていましたけど、それとはまた趣向の違う気合いの入り方ですね。声を含めムード作りというのを丁寧に行ってるという感じです。
まりあ役の声、テレビアニメとか聞いた覚えがあるような……岩居由希子さんですか、どうりで。他に、紫苑役あたりがうまいなーという感じでした。貴子役もうまいかな(下手な人は居ないんですが、特にうまいなという感じで)。
ムードと世界観
誰が何と言おうとマリみてがあったからこそ通った企画に違いないのですが。最初、単純な二匹目どじょうかと思ったんですが、それは違ったようです。色々踏まえつつも、また違った世界観を丁寧に作り込んでいたと思います。言葉遣いも、過度にお嬢様台詞にすることもなく、丁寧語に適当な古い慣用句を持ってきてムードを出したりとか。
お話
お話の主軸としてお嬢様学校に転校という部分はあるわけですが、そっちがおまけ的要素なん感じがしました。メインは結局、お嬢様学校の中の恋愛模様を丁寧に書いていったという感じの印象が強いですね。すごいそっちの気合いは感じますし描写も丁寧、作者の熱みたいなものも感じます。
一方で、エロゲーであるから主人公と恋愛させなきゃならないのですが、その部分においてなんというか丁寧なんですけど、必然性と物語性の薄さを感じてしまうというか*1。ラストまで、あくまでお嬢様たちの物語なんだという形で、鍵やageみたいな大層なカタルシスを用意することなく終了*2。
これは明らかに好みが別れますね~。
お嬢様学校における女子たち同士の微妙な心の動きの描写を面白いと思う人は面白いだろうし、興味がない人は興味ないだろうなという。そういう意味では「まんまマリ見て」で、マリ見て好きな人は好きだろうけど……という感じかなあ。どちらかと言うと女性向けゲームな気がします。小説マリ見てが好きな人はある程度好きだろうけど、ただ決して恋愛がメインではないのでラブラブな話が好きな人には物足りないかもしれないし、マリ見て1巻や9巻ほど物語性もないのでそこを求める人もまた辛くなるかも。
それに加えて成長物語でもありましたね。そういう意味では青春モノなのかもしれません。
ErogameScapeみてみると、やっぱりそんな感じですね。
主人公の瑞穂
スーパーマンです。いやスーパーレディーでもいいですけど。欠点がまるでない、ヒーロー……じゃない完璧なヒロインです。もう欠点ないよ瑞穂ちゃんという感じで、この辺も徹底しているといえば徹底しているし、逆説的にみれば以下略という感じですね。
奏シナリオ・由香里シナリオ
どちらのシナリオも「どうせご都合的に配置したキャラだから」と大して期待していなかったんですが、どちらもとても良かったです。エンディング(エピローグ)こそ、メイン3キャラに敵わないとは思いますが、それはそれとしてよく出来ていました。
御門まりやシナリオ
幼なじみからの転換や親しいからこそのもどかしさみたいなお話です。がんばって書いている割に、まりやの気持ちというものが余りプレイヤーに伝わってこず、瑞穂ちゃんおなじく「なんで拗ねて居るんだろという?」となってしまったのが勿体なくもあり、ゲーム的にはそれでもいいのかなと感じるところでもあり。
なんていうか瑞穂ちゃんに急接近する女生徒とか、夢を追いかける人または夢を諦めた人という対比対象でも居ればよかったのかも知れませんが……それはそれでおとボクっぽくないか。話自体は好きですが、いかんせん描き切れてない印象。*3
十条紫苑シナリオ
これはよいですねー。最後の収まり的にもおとボクの正当エンディングなんじゃないかと思います。ただ最初にやらない方がいいと思うけど(少なくとも貴子シナリオを先にやりましょう)。ルートが非常に分かりにくく致し方なく攻略サイトをみましたが、第2話の選択肢で奏シナリオに傾かないとダメだったみたいです。
それはもとかくとして、お嬢様のお家柄や許嫁という、言ってみればベタベタな展開なのですが、それでもさほど深くない伏線や構成が*4非常によくて、圭&美智子の二人や、貴子についても描かれた。自分はベタベタな話を丁寧に描いた物って大好きですし。本命シナリオなんじゃないかなー*5。
本編には関係ありませんが、病気で倒れたシーンの直後に「命に別状はない病気」と説明させるあたり、その必要性を多いに実感して苦笑いしてしまいました。
中間感想
まだ全部終えてませんが、お話としての紫苑シナリオ、次いでラブラブ(ツンデレ)を楽しむ貴子シナリオなのかなという感じです。*6
まあでもやっぱり一番違和感を感じるのは、やけに簡単に主人公の瑞穂ちゃんが♂だということをみんなが受け入れているところなんですけどね……まあそこは突っ込むなということなんでしょうけども。完全に女と女の恋愛劇(+でも結婚出来る)としてみる方が話としてはしっくり来ると思います。そこいうと、いっそTS設定な方がしっくりきたのではと思わなくてもないですが、それはそれでゲームの趣旨変わってしまいますしね。
なんというか、プレイヤーとして一番惚れるのは(女性として見たときの)主人公瑞穂ちゃんなんじゃないかと(笑)
その他
一子シナリオ……おまけですね。なくてよかったのではないかと。あと、やっぱり、社会の先生の演技が下手(嘘っぽい)です。
全体として
正直ここまで良いとは思いませんでした。プレイに集中できずあまり印象かよくなかったまりやシナリオもやり直していいかなとも思います。
総じて人の感情を描くのが上手いんですね。とりわけ描写が繊細なわけでも、特に印象的な台詞があるわけでも、大盛りあがりする物語展開があるわけでもなく、「とことん地味でベタ」と言えばそれまでなのですが、そういう地味な感情を丁寧に描いていったなぁという風に感じました。
この手のゲームは恋愛モノだらけなのですが、ここまで愚直に恋愛をきちんと描いたというのは実にめずらしいように感じてなりませんでした。ほかのゲームってほら、恋愛でもなんでもないご都合主義ですから。声の演技もよかったですが、この辺ライターさんと声優さんの熱が入った感じをうけますね。非常に好みです。
商業的には「女子校に転入」というある意味時代の流れにたまたま乗ったということで成功したんだと思います。だから作者曰く「なんで受けたのかよくわからない」というとおり、大半の人は、どうせきちんとプレイしてないで途中で投げ出しているでしょうね。そりゃ大盛りあがりこそしませんけど、とても丁寧できちんといろんな想いが描かれたよい作品だと思いますよ。
声とかシナリオがよかったんで、イベントCG不足や立ち絵の使い回しがやや気になるところではありました。予算と直結するところだったので致し方なかったというところでしょうが。音は音楽は普通に合っていたと思いますし、それよりも効果音がきちんと作ってあってよかったなぁという感じです。プログラム……はかなり重たかったけど。行っている処理にしては重すぎるんじゃないかと思います、はい。レイヤー合成やスクロールなどはもう少し気合い入れて最適化してほしいものです。
総じて、よいお話でした、ええ本当に。単なるエンターテインメントてはなく、想いがほのかに伝わってくるのが好きでした。