2007/02/18(日)ゲーム「処女はお姉さまに恋してる」の感想

おと姉感想。

ちびちびプレイしてたんですが、初回完了しました。貴子シナリオでしたが。

台詞回しと声

口語調になるようにものすごく工夫してあります。意味の重複や倒置、文章として不完全な日本語を使ったゲームというのは初めてみた気がします。これは台詞のリアリティでして、その辺をよく抑えてるなーと感心してしまいました。

普通3行に収まらないような長台詞を邪魔になるので途中で2つの台詞に分けてしまうのですが、このゲームでは切っていません。手抜きなのかと思ったら、声優の声を切りたくなかったらしい。私は普通、ゲームをするとき音声が遅すぎると邪魔でどんどんメッセージを送ってしまうのですが、ほとんど全編台詞を聞いてプレイしてました。

演技がうまいのもそうですが、時間と金をかけて録音しています。これだけ贅沢に間を使った声を録音しようとすると、取り直しも増えるし録音する効率も悪く、お金もかかってしまうんですが、そこがすごい気合い入ってるというか。君望とかも声には気合い入っていましたけど、それとはまた趣向の違う気合いの入り方ですね。声を含めムード作りというのを丁寧に行ってるという感じです。

まりあ役の声、テレビアニメとか聞いた覚えがあるような……岩居由希子さんですか、どうりで。他に、紫苑役あたりがうまいなーという感じでした。貴子役もうまいかな(下手な人は居ないんですが、特にうまいなという感じで)。

ムードと世界観

誰が何と言おうとマリみてがあったからこそ通った企画に違いないのですが。最初、単純な二匹目どじょうかと思ったんですが、それは違ったようです。色々踏まえつつも、また違った世界観を丁寧に作り込んでいたと思います。言葉遣いも、過度にお嬢様台詞にすることもなく、丁寧語に適当な古い慣用句を持ってきてムードを出したりとか。

お話

お話の主軸としてお嬢様学校に転校という部分はあるわけですが、そっちがおまけ的要素なん感じがしました。メインは結局、お嬢様学校の中の恋愛模様を丁寧に書いていったという感じの印象が強いですね。すごいそっちの気合いは感じますし描写も丁寧、作者の熱みたいなものも感じます。

一方で、エロゲーであるから主人公と恋愛させなきゃならないのですが、その部分においてなんというか丁寧なんですけど、必然性と物語性の薄さを感じてしまうというか*1。ラストまで、あくまでお嬢様たちの物語なんだという形で、鍵やageみたいな大層なカタルシスを用意することなく終了*2

これは明らかに好みが別れますね~。

お嬢様学校における女子たち同士の微妙な心の動きの描写を面白いと思う人は面白いだろうし、興味がない人は興味ないだろうなという。そういう意味では「まんまマリ見て」で、マリ見て好きな人は好きだろうけど……という感じかなあ。どちらかと言うと女性向けゲームな気がします。小説マリ見てが好きな人はある程度好きだろうけど、ただ決して恋愛がメインではないのでラブラブな話が好きな人には物足りないかもしれないし、マリ見て1巻や9巻ほど物語性もないのでそこを求める人もまた辛くなるかも。

それに加えて成長物語でもありましたね。そういう意味では青春モノなのかもしれません。

ErogameScapeみてみると、やっぱりそんな感じですね。

主人公の瑞穂

スーパーマンです。いやスーパーレディーでもいいですけど。欠点がまるでない、ヒーロー……じゃない完璧なヒロインです。もう欠点ないよ瑞穂ちゃんという感じで、この辺も徹底しているといえば徹底しているし、逆説的にみれば以下略という感じですね。

*1 : いっそ要らないのでしょうけど、まあそういうわけにもいかずパターンですね。そこまで違和感ないって言えばないのですが、最後の目的ヒロインとのシーンが必要かと言われたら要らないとしか答えようがないなぁ

*2 : そんな大事があったら世界観ぶち壊しですが

奏シナリオ・由香里シナリオ

どちらのシナリオも「どうせご都合的に配置したキャラだから」と大して期待していなかったんですが、どちらもとても良かったです。エンディング(エピローグ)こそ、メイン3キャラに敵わないとは思いますが、それはそれとしてよく出来ていました。

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御門まりやシナリオ

幼なじみからの転換や親しいからこそのもどかしさみたいなお話です。がんばって書いている割に、まりやの気持ちというものが余りプレイヤーに伝わってこず、瑞穂ちゃんおなじく「なんで拗ねて居るんだろという?」となってしまったのが勿体なくもあり、ゲーム的にはそれでもいいのかなと感じるところでもあり。

なんていうか瑞穂ちゃんに急接近する女生徒とか、夢を追いかける人または夢を諦めた人という対比対象でも居ればよかったのかも知れませんが……それはそれでおとボクっぽくないか。話自体は好きですが、いかんせん描き切れてない印象。*3

*3 : 注意:プレイにあまり集中できなかったので、印象が悪くなっていることは否めません

十条紫苑シナリオ

これはよいですねー。最後の収まり的にもおとボクの正当エンディングなんじゃないかと思います。ただ最初にやらない方がいいと思うけど(少なくとも貴子シナリオを先にやりましょう)。ルートが非常に分かりにくく致し方なく攻略サイトをみましたが、第2話の選択肢で奏シナリオに傾かないとダメだったみたいです。

それはもとかくとして、お嬢様のお家柄や許嫁という、言ってみればベタベタな展開なのですが、それでもさほど深くない伏線や構成が*4非常によくて、圭&美智子の二人や、貴子についても描かれた。自分はベタベタな話を丁寧に描いた物って大好きですし。本命シナリオなんじゃないかなー*5

本編には関係ありませんが、病気で倒れたシーンの直後に「命に別状はない病気」と説明させるあたり、その必要性を多いに実感して苦笑いしてしまいました。

*4 : 褒める意味で深くないと書いてます。凝った伏線や構成は世界観に合わないので

*5 : 簡単に調べると、好みが別れるようで不評な人には不評のようですが

中間感想

まだ全部終えてませんが、お話としての紫苑シナリオ、次いでラブラブ(ツンデレ)を楽しむ貴子シナリオなのかなという感じです。*6

まあでもやっぱり一番違和感を感じるのは、やけに簡単に主人公の瑞穂ちゃんが♂だということをみんなが受け入れているところなんですけどね……まあそこは突っ込むなということなんでしょうけども。完全に女と女の恋愛劇(+でも結婚出来る)としてみる方が話としてはしっくり来ると思います。そこいうと、いっそTS設定な方がしっくりきたのではと思わなくてもないですが、それはそれでゲームの趣旨変わってしまいますしね。

なんというか、プレイヤーとして一番惚れるのは(女性として見たときの)主人公瑞穂ちゃんなんじゃないかと(笑)

*6 : 自分としては擬似恋愛要素はどうでもいいのですが

その他

一子シナリオ……おまけですね。なくてよかったのではないかと。あと、やっぱり、社会の先生の演技が下手(嘘っぽい)です。

全体として

正直ここまで良いとは思いませんでした。プレイに集中できずあまり印象かよくなかったまりやシナリオもやり直していいかなとも思います。

総じて人の感情を描くのが上手いんですね。とりわけ描写が繊細なわけでも、特に印象的な台詞があるわけでも、大盛りあがりする物語展開があるわけでもなく、「とことん地味でベタ」と言えばそれまでなのですが、そういう地味な感情を丁寧に描いていったなぁという風に感じました。

この手のゲームは恋愛モノだらけなのですが、ここまで愚直に恋愛をきちんと描いたというのは実にめずらしいように感じてなりませんでした。ほかのゲームってほら、恋愛でもなんでもないご都合主義ですから。声の演技もよかったですが、この辺ライターさんと声優さんの熱が入った感じをうけますね。非常に好みです。

商業的には「女子校に転入」というある意味時代の流れにたまたま乗ったということで成功したんだと思います。だから作者曰く「なんで受けたのかよくわからない」というとおり、大半の人は、どうせきちんとプレイしてないで途中で投げ出しているでしょうね。そりゃ大盛りあがりこそしませんけど、とても丁寧できちんといろんな想いが描かれたよい作品だと思いますよ。

声とかシナリオがよかったんで、イベントCG不足や立ち絵の使い回しがやや気になるところではありました。予算と直結するところだったので致し方なかったというところでしょうが。音は音楽は普通に合っていたと思いますし、それよりも効果音がきちんと作ってあってよかったなぁという感じです。プログラム……はかなり重たかったけど。行っている処理にしては重すぎるんじゃないかと思います、はい。レイヤー合成やスクロールなどはもう少し気合い入れて最適化してほしいものです。

総じて、よいお話でした、ええ本当に。単なるエンターテインメントてはなく、想いがほのかに伝わってくるのが好きでした。