2006/04/30(日)ゲーム「ToHeart2 XRATED感想」
最初に
ToHeartの生みの親である高橋龍也さんはすでにLeafにはいないわけで、その辺どうなのかなあと期待と不安を抱きつついざプレイ開始。やってみて最初にまず懐かしい、ひたすら懐かしい。BGM*1が懐かしすぎです。あれから10年近く経つんですね(遠い目)。当時、高校で大流行したのを思い出しました*2。こう言ってはなんですけど、掛け合いとかムードとかちゃんとToHeartしてるなぁと。いやほんとよく研究してます。と詳細は立ち入らずとりあえず攻略キャラ別に。
ノーマルエンド(攻略なし)
3月から5月のGWの修学旅行前まで、2年生などなど、ありとあらゆる模倣に思わず苦笑いしたぐらいですから、初代ToHeartにおいて「僕たち友達だよね」で終わる有名な雅史エンドも模倣してくれるだろうと思ったら案の定、やってくれました。うむ満足です。
柚原 このみ
初代でいうところの神岸あかりに相当する幼なじみキャラ。キャラの造形が狙いすぎ(見た目と声と性格と)なのは別とすればシナリオテーマ的には『幼なじみからの脱却』で、ある意味あかりシナリオの焼き直し。焼き直し……というより2番煎じ。決してシナリオの作りにどこか決定的な欠陥があるわけではないのですが、あかり(のシナリオ)と比較してしまうとあかりシナリオ(by高橋氏)のほうか1枚も2枚も上手という感じです。
向阪 環(こうさか たまき)
ネット界隈でタマ姉(ねえ)タマ姉というのが気になってたんですが、あーなるほど、こりゃまた強烈に魅力的なキャラクターですね。人気でるのも頷けますね。タマ姉は小悪魔的なキャラクターで、いたずらっ娘でおネエさまとまあほんとあるラインにはストレート直球ど真ん中。
なんですけど。シナリオテーマ的にはやはりこのみと同じ「幼なじみからの脱却」になるのかな。しかしどうやって山を作るよーと思ったら、タマ姉を慕っている女子3人組という*3百合百合ですか、そうですか、そう来ましたか(笑) という感じで。まあよく出来たけどよく出来てたなりの普通でした。
十波 由真(となみ ゆま)
マウンテンバイクで突っかかってくる、喧嘩っぱやい。でも本当は、自分の人生を見つけようと必死でもがいてたという、テーマ的にはとっても好きなシナリオです。ただ、シナリオが5月に突入してもいっこうに終わる気配を見せず……一体いつまで続くんだこれは……と、ONEのシナリオを思い出してしまいました。なんかそういう感じの延長戦の繰り返し。
ツインビルの真ん中で、ガラスに挟まれた二人という構図は、WHITE ALBUMの美咲シナリオの、公園の金網越しという、ある意味もっとも象徴的なシーンのオマージュなんだとおもいますけど、でもそれってガラスだと意味ないんだよね。
シナリオ○(やや(かなり)説教くさいかもしれないけど、個人的には好き)、演出もよく頑張ってるんだけどやや(かなり)見当違い。ラストあのなんも中途半端な終わりはないでしょうという感じでした。
ここまでの感想
いやほんとよく研究して作ってるけど、現時点では前作を越えてないというか。下手によく出来て、下手によく似せてあるだけに、初代を知ってるとどうしても差を感じてしまいます。初代(の高橋氏)ならこのシーンはここで切るよなーとか、場面転換だけでこう語るよなーとか、そういう越えられない壁みたいなものをやや感じ中。
初代では、あかりシナリオや委員長シナリオが印象的なんですが、あれの良さってのはシナリオ構成云々よりもテキスト表現を含めた演出の良さってのがあるんですよね。だから内容分かってても再度プレイするとやっぱりいいなぁと思ってしまう。
だとしても、十分面白くはできてると思います。Leafも社員増えて収入がピンチでヤバゲでお金欲しくてメディアミックス前提で作ったとしか思えない続編ですが、いまのところはまあまあではないかと。
小牧 愛佳(こまき まなか)、委員長、いいんちょ
やたら主人公の女性が苦手という部分が強調されていたものの、基本的にはよく出来てて、ラストのサラクシーンもしてやられた感じ。面白かったですね。もっと印象深く演出してもよかったとは思いますが、まあこういうライターさんなのかなぁという感じです。テキストを読んでいても、十波シナリオと同じ人が書いたんだなあってのが分かる感じの、物の見方や考え方みたいなのが出ていました。結構、自分は好きな(近いところがある)タイプですね(苦笑) 同じライターのくさりが気になるなぁ。
十波シナリオ、小牧シナリオ共にいろいろな意味でKeyっぽさ*4は否めませんが、それはそれでいいですねぇ。たださぁ、小牧シナリオのテーマがどう見ても灰羽連盟の劣化コピーと感じたのですけどこじつけ?(汗) 小牧、ちまたでは大人気みたいですけど、個人的には十波シナリオのいいんちょの方が好きですね。「だめだよぉ~。ケンカしちゃだめだよぉ~」とか、いい味出してます。とはいえ、比較的よく出来てると思うんですが。
細かいことですが、他のシナリオではテキストに対して収録されている音声に結構工夫が見られたのに(「……」でも声があるとか)、こと小牧に関してはテキストそのままという感じがしました(特に後半)。勿体なかったです。
あと、PC版追加のHシーン……のために、PS2版の「3時間後」が何事もなく翌日になったり、というかさっきまであんたら妹の心配してたんじゃないのか……という感じで、やる気ないのかもうちょっと追加する場所考えようよという感じでした。
ルーシー・マリア・ミソラ
無茶苦茶とっつきにくい変なキャラ=るーこ(ルーシー)が、一転して親しくなるといい感じになるというシナリオ。自称宇宙人なので、宇宙に返してあげないといけないんですが(苦笑) 突拍子もない(節操がない)というToHeart的な特徴を継いだキャラなのかも。
全体的に演出中心のご都合主義全開の展開。ご都合主義ということに目をつぶれば、話筋は良いと思います。プレイヤーに対する情報の与え方や場面場面での見せ方、話しの流れの構成という意味では(心理面でも事実面でもご都合主義ということを除けば)非常によく出来ていて、その辺は由真/小牧(愛佳)シナリオよりうまい。そういう意味では面白いです。
ですが、その一方で地の文章が非常に浮いています。今までプレイしたこのみ/タマ姉シナリオ(菅宗氏)、由真/小牧シナリオ(枕流氏)は、主人公の見せ方に差があるにしろ文章という意味でそこまで違和感は感じなかったのですが、このるーこシナリオ(担当は三宅章介氏)は主人公としての地の文章が明らかに違うという印象を受けます。ダメ主人公には変わりないのですが、若気の至りだとしても手に負えない感じのダメさ、軽い感じのダメさ、落ち着きがない……とかいう印象です(主人公が)。またキャラを萌えさせる感じの書き込みも苦手なように感じました。
細かいこと。
- ルーシーシナリオに入ると、4月中から別モードに行って帰ってこれなくなります。5月を長引かせる由真/小牧(愛佳)シナリオよりと比べると……どうだろう。移動選択がでない分、こっちのほうがもはやToHeart(のシステム)じゃない気もする。
- もっとコンパクトにまとめてしまってよかったと思う。ToHeart(初代)のマルチみたいに。
- 宇宙人であるという虚構をあの舞台設定で表現して大きなボロを出さなかったのはうまい。
- 全体的にはよいけど、画面のカラー変更とか(青っぽくとか)若干演出過剰。もうちょっと抑えて使って(出し惜しみして)いいと思う。
- あのラストシーンは必要最小限情報で締めくくるというライターの意図は汲むにしろ(このラインは上手い)、今回のToHeart2という舞台ではまったくミスマッチ。
- よく考えると、全体的な演出方向がキャラクターではなく「宇宙人」という設定のライン描写に行ってしまっているので方向違い。
結局のところ、ライターさんがToHeart2のラブコメという世界観に向いてなかったと思われます。……でもさ、三宅さんってメインライターなんだよね。
久寿川ささら
ネットで評判最低のささらです、はい。んー「悪くないじゃん(笑)」。そりゃたしかに、両生類好きみたいな奇をてらいすぎてすぎて失敗したキャラ立てとか、主人公がダメダメすぎていわゆる鬱ゲー並なもどかしさを味わせてくれるとか、宝探しをクライマックスにしておけばいいのに、唐突にささらの両親出してきたとおもったらぼくらの七日間戦争始めちゃったりとか、色々ありますけども、えぇ(笑)
ライターは三宅氏。地の文は相変わらず喋りすぎ(説明しすぎ)で、会話もけっこー説明しすぎな感じな感じでした。ToHeartという世界観には合わないんじゃないかなぁ、とは思いつつも、会社方針として前作ToHeartとキャラ的には縁を切ることとか、違うものをという要求があったみたいですから、そういう意味では一番「違うもの」を「真面目」に作ってるのかもしれないな~と好意的に解釈もできます、はい。
思いつくところを箇条書きにすると。
- テーマ的にもキャラ的にも、すごい真面目に書きすぎた感があって良い人には良いんだけど、ToHeart2をやる人はおそらく求めてなかったんだなろうなぁ。
- そしてその関心のテーマもささら個人の問題に焦点を当てた前半と(宝探しまで)、そうなった原因である環境(両親)に焦点を当てた後半に描写と構成が分散したのが難点。どっちか一本に絞ればよかったかと。
- 話の組み立て方はラノベ作者で有名な乙一流のプロットの作り方を彷彿と……いやまあ基本なんだけども。
- テーマに対して若干、構成・書き込み・演出不足。若干なんだけど描き切れてないよなぁーと感じてしまいました。あと投げっぱなし感も。
- ラストのラストが、まあ恋愛ラブコメでは納得してもらえないかもねぇ(初代の志保みたいに)。
- 色々なキャラ総出演で総まとめ的な狙いなのかもしれず。最後にやるべきシナリオかも
でまあぶっちゃけどうだったのよ? と聞かれれば全体的には好きですよ。ラストもベタですがああいうの好きでして、ええ(苦笑) でも、良かったと言い切れないのがなんとも口惜しいところで、そしてプレイヤーを選ぶというのもまた間違えないところです。結論としては一緒ですね。ToHeart的ラブコメにこのライターさんあまりは向かない。age的ラブコメならたぶんすごい向くと思う*5
というわけで結局いつも通りでした。というか若干飽き気味ですが、この際だから全員クリアかなぁーという義務感でゲーム。何かものすごく間違ってる(笑)
笹森 花梨
ライターはまるいたけし氏。オカルト研究会で宇宙人どうのという、非常にどうでもいいキャラでした。やってみました、やっぱりどうでもいいシナリオでした。山火事食い止めました、チャンチャンってオチはまあたしかに普通だと思いますよ、この手のゲームとしては。
しかして、ここまでプレイしてきて、ここまで普通じゃないキャラがたくさんいると逆に浮くというか物足りないというか(苦笑) どうでも良さではタメを張る初代の志保のPS版ぐらいみせろーぐらー
姫百合 珊瑚/姫百合 瑠璃
百合でした。間違えなく百合でした(終了)。どうみても○学生な絵とか、メイドロボまで出てきて○な展開とか、ある意味ファンサービス旺盛なシナリオでした……が、それはとりあえず置いておいて。
悪くなかったですが、ライターは三宅氏。主人公が変、という感じはありませんでしたが、台詞がやたら饒舌……。シナリオは悪くないんですけど、説明過剰という感じというか、長文独演会しなくても分かるシナリオにしておこうよというツッコミを入れつつ、それにしては序盤~中盤までのシナリオの長さにかなり飽きつつという感じでした。
テーマ的には「盲目的な交友」なのは自分も考えたことありますし、多分よくあるものなんだと思いますが、そこからの脱却……ではなくて「そのままでいいじゃない」ってオチは(ToHeart2という作風的に)いかがなんだろうか、とはおもった。
ぜひ枕流さんに書いてほしかったなぁ、このシナリオ(笑) さもなくば(Keyを辞めた)久弥直樹氏あたりだと強烈な詰め込みが描きそうで、それはそれで想像できて面白い(笑)