2007/07/22(日)ゲーム「ナルキッソス2」感想
ナルキッソス2は、元ねこねこソフトのエライヒト片岡とも氏のサークルステージ☆ななで無償配布されているノベルゲームです。
プレイ感想
元々、知り合いの方が音楽で参加しているということから知ってプレイしてみました。プレイ時間2~3時間ってことでしたので、ちょっとプレイするには良いかなと。 結局5~6時間ぐらいかかったのはいつもどおりでしたが(苦笑)*1
感想としては一言で表すと片岡とも氏色でした。銀色第1章とかと同じく「生と死」を本質的テーマとして、 死に逝くものを描いています。死を目前としたとき人は何を感じるのか、そこを深く掘り下げています。
ゲーム中、非常に多くの投げかけが行われるのですが、それに対する答えは用意されていません。実際問題、どれが正解とは片付けられないものがあり、煮え切らないと言えばそれは正しいのかもしれませんが、でもそこでもないところに本作のテーマはあるような気がします。
プレイしていると、とも氏は実際に死に接したことがあるのではないのかと思えて仕方ありません。少なくとも死に対して深く考えたことがないと、あれだけの言葉は出てこないと思うのです。そんなとも氏が結局何を一番描きたかったのかと考えると、死に逝く者が苦悩の末の辿り着いく場所とその瞬間(瞬間)の大切さなんじゃないかと思います。
気になったところ、細かいこと、キャスト
- エレベーターの音(SE)が電子レンジの音らしく、どうにも気になって仕方なかった。
- フリーで公開できてしまうことに驚きを感じてしまうと共に、一般流通に乗らないことの限界もあるのだなぁーと。
- 背景紙芝居という使い方もアリだなぁーと。
CAST
人物 | キャスト |
---|---|
姫子 | 柳瀬なつみ |
千尋 | 後藤邑子 |
優花 | 岩居由希子 |
セツミ | 綾川りの |
ママ | 田中凉子 |
女の子 | 能登麻美子 |
どうにも岩居さんが(声を覚えているので)気になって気になって。
片岡ともさんについて
生死のテーマもそうなんですが、真摯といいますか愚直といいますか、銀色もそうでしたが好きです。ねこねこ解散にしてもそうなのでしょうけど、いろいろ見ていてそれでいてメッセージを伝えるということに非常に苦悩しているという印象があります。銀色で感じたのは結局ともさんの表現者としての魅力でしたし、本作もやはりそういう感じです。
褒めてばかりも何なので。ナルキッソス2では生死に関する言葉をいくつも投げかけやりとりをするのですが、逆にそれが目立ち、本来もっとも描きたいことであろう最後の結末が弱く映ってしまいました。一緒に同梱されているナルキッソス(旧ナルキ)では、逆にあっさりしすぎて結末の、その重さがあまり感じられませんでした。
内容的にどうしても、銀色第1章と比べてしまうのですが、シナリオ文の上手さとしては「ナルキ2>旧ナルキ>銀色第1章」で、旧ナルキは銀色っぽさが残ってるんですが、そこいくとナルキ2は文として実にすっきりとしていて読みやすいです(くどくない)。ただ、テーマのわかりやすさとしては銀色第1章が一番かなと思います。*2
つまり。死を前にしての生の存在、苦悩の描写はそれはそれで大切なお話になのですが、ただもし(自分の解釈が正しくて)ラストシーンに主軸があるのだとすれば、余計すぎたと言わざるを得ません。絞りきれないと結局発散してしまいます。メッセージを洗練するためには、それ以外のメッセージをあまり入れてはならないのです。
しかしともさんほどの方が、そこに至らないと考えるのも不自然な話です。そう考えてみれば、焦点を絞らないことにその主軸があったのでしょうか。軸が絞られたお話というのは、結局一言で解説できる話です。人間という動物は、物事を解釈し枠にはめて咀嚼するとそれを忘れる性質があります。だからあえて咀嚼出来ないものを用意したんではないかと思うのです。
さらなる勘ぐりをするならば
『…こうして、わたしの元へと、ルールは委ねられた』
『まだ見ぬ、本来の担い手…』
『きっと、すぐに現われるのだろう』
『きっと、わたしの手を離れても…』
『いつまでも…語り継がれるのだろう…』
だから自分の手から、読んでくれた方へと委ねました。
片岡ともさんの公式BBSでの発言より
以下はかなり勘ぐりです。ルールを物語りやテーマと置き換えると、ともさんはこの手の作品はしばらくの間作らないのではないかとも思えるのです。さもなければ、これ以上のものを作ることは(自身では)不可能と感じているのではないかとも思うのです。これ以上の結論でもいいのかもしれません。
なぜねこねこが解散したのかについも諸説ありますが、こう考えるとすっきりしませんか?
とまあ
なにはともあれ面白かったです。短い作品ですので(しかも無償ですので)よかったらみなさんプレイしてみてください。自分も久しぶりにシナリオでも書いてみようかなぁ、と思った本作でした。*3
2007/02/18(日)ゲーム「処女はお姉さまに恋してる」の感想
おと姉感想。
ちびちびプレイしてたんですが、初回完了しました。貴子シナリオでしたが。
台詞回しと声
口語調になるようにものすごく工夫してあります。意味の重複や倒置、文章として不完全な日本語を使ったゲームというのは初めてみた気がします。これは台詞のリアリティでして、その辺をよく抑えてるなーと感心してしまいました。
普通3行に収まらないような長台詞を邪魔になるので途中で2つの台詞に分けてしまうのですが、このゲームでは切っていません。手抜きなのかと思ったら、声優の声を切りたくなかったらしい。私は普通、ゲームをするとき音声が遅すぎると邪魔でどんどんメッセージを送ってしまうのですが、ほとんど全編台詞を聞いてプレイしてました。
演技がうまいのもそうですが、時間と金をかけて録音しています。これだけ贅沢に間を使った声を録音しようとすると、取り直しも増えるし録音する効率も悪く、お金もかかってしまうんですが、そこがすごい気合い入ってるというか。君望とかも声には気合い入っていましたけど、それとはまた趣向の違う気合いの入り方ですね。声を含めムード作りというのを丁寧に行ってるという感じです。
まりあ役の声、テレビアニメとか聞いた覚えがあるような……岩居由希子さんですか、どうりで。他に、紫苑役あたりがうまいなーという感じでした。貴子役もうまいかな(下手な人は居ないんですが、特にうまいなという感じで)。
ムードと世界観
誰が何と言おうとマリみてがあったからこそ通った企画に違いないのですが。最初、単純な二匹目どじょうかと思ったんですが、それは違ったようです。色々踏まえつつも、また違った世界観を丁寧に作り込んでいたと思います。言葉遣いも、過度にお嬢様台詞にすることもなく、丁寧語に適当な古い慣用句を持ってきてムードを出したりとか。
お話
お話の主軸としてお嬢様学校に転校という部分はあるわけですが、そっちがおまけ的要素なん感じがしました。メインは結局、お嬢様学校の中の恋愛模様を丁寧に書いていったという感じの印象が強いですね。すごいそっちの気合いは感じますし描写も丁寧、作者の熱みたいなものも感じます。
一方で、エロゲーであるから主人公と恋愛させなきゃならないのですが、その部分においてなんというか丁寧なんですけど、必然性と物語性の薄さを感じてしまうというか*1。ラストまで、あくまでお嬢様たちの物語なんだという形で、鍵やageみたいな大層なカタルシスを用意することなく終了*2。
これは明らかに好みが別れますね~。
お嬢様学校における女子たち同士の微妙な心の動きの描写を面白いと思う人は面白いだろうし、興味がない人は興味ないだろうなという。そういう意味では「まんまマリ見て」で、マリ見て好きな人は好きだろうけど……という感じかなあ。どちらかと言うと女性向けゲームな気がします。小説マリ見てが好きな人はある程度好きだろうけど、ただ決して恋愛がメインではないのでラブラブな話が好きな人には物足りないかもしれないし、マリ見て1巻や9巻ほど物語性もないのでそこを求める人もまた辛くなるかも。
それに加えて成長物語でもありましたね。そういう意味では青春モノなのかもしれません。
ErogameScapeみてみると、やっぱりそんな感じですね。
主人公の瑞穂
スーパーマンです。いやスーパーレディーでもいいですけど。欠点がまるでない、ヒーロー……じゃない完璧なヒロインです。もう欠点ないよ瑞穂ちゃんという感じで、この辺も徹底しているといえば徹底しているし、逆説的にみれば以下略という感じですね。
奏シナリオ・由香里シナリオ
どちらのシナリオも「どうせご都合的に配置したキャラだから」と大して期待していなかったんですが、どちらもとても良かったです。エンディング(エピローグ)こそ、メイン3キャラに敵わないとは思いますが、それはそれとしてよく出来ていました。
御門まりやシナリオ
幼なじみからの転換や親しいからこそのもどかしさみたいなお話です。がんばって書いている割に、まりやの気持ちというものが余りプレイヤーに伝わってこず、瑞穂ちゃんおなじく「なんで拗ねて居るんだろという?」となってしまったのが勿体なくもあり、ゲーム的にはそれでもいいのかなと感じるところでもあり。
なんていうか瑞穂ちゃんに急接近する女生徒とか、夢を追いかける人または夢を諦めた人という対比対象でも居ればよかったのかも知れませんが……それはそれでおとボクっぽくないか。話自体は好きですが、いかんせん描き切れてない印象。*3
十条紫苑シナリオ
これはよいですねー。最後の収まり的にもおとボクの正当エンディングなんじゃないかと思います。ただ最初にやらない方がいいと思うけど(少なくとも貴子シナリオを先にやりましょう)。ルートが非常に分かりにくく致し方なく攻略サイトをみましたが、第2話の選択肢で奏シナリオに傾かないとダメだったみたいです。
それはもとかくとして、お嬢様のお家柄や許嫁という、言ってみればベタベタな展開なのですが、それでもさほど深くない伏線や構成が*4非常によくて、圭&美智子の二人や、貴子についても描かれた。自分はベタベタな話を丁寧に描いた物って大好きですし。本命シナリオなんじゃないかなー*5。
本編には関係ありませんが、病気で倒れたシーンの直後に「命に別状はない病気」と説明させるあたり、その必要性を多いに実感して苦笑いしてしまいました。
中間感想
まだ全部終えてませんが、お話としての紫苑シナリオ、次いでラブラブ(ツンデレ)を楽しむ貴子シナリオなのかなという感じです。*6
まあでもやっぱり一番違和感を感じるのは、やけに簡単に主人公の瑞穂ちゃんが♂だということをみんなが受け入れているところなんですけどね……まあそこは突っ込むなということなんでしょうけども。完全に女と女の恋愛劇(+でも結婚出来る)としてみる方が話としてはしっくり来ると思います。そこいうと、いっそTS設定な方がしっくりきたのではと思わなくてもないですが、それはそれでゲームの趣旨変わってしまいますしね。
なんというか、プレイヤーとして一番惚れるのは(女性として見たときの)主人公瑞穂ちゃんなんじゃないかと(笑)
その他
一子シナリオ……おまけですね。なくてよかったのではないかと。あと、やっぱり、社会の先生の演技が下手(嘘っぽい)です。
全体として
正直ここまで良いとは思いませんでした。プレイに集中できずあまり印象かよくなかったまりやシナリオもやり直していいかなとも思います。
総じて人の感情を描くのが上手いんですね。とりわけ描写が繊細なわけでも、特に印象的な台詞があるわけでも、大盛りあがりする物語展開があるわけでもなく、「とことん地味でベタ」と言えばそれまでなのですが、そういう地味な感情を丁寧に描いていったなぁという風に感じました。
この手のゲームは恋愛モノだらけなのですが、ここまで愚直に恋愛をきちんと描いたというのは実にめずらしいように感じてなりませんでした。ほかのゲームってほら、恋愛でもなんでもないご都合主義ですから。声の演技もよかったですが、この辺ライターさんと声優さんの熱が入った感じをうけますね。非常に好みです。
商業的には「女子校に転入」というある意味時代の流れにたまたま乗ったということで成功したんだと思います。だから作者曰く「なんで受けたのかよくわからない」というとおり、大半の人は、どうせきちんとプレイしてないで途中で投げ出しているでしょうね。そりゃ大盛りあがりこそしませんけど、とても丁寧できちんといろんな想いが描かれたよい作品だと思いますよ。
声とかシナリオがよかったんで、イベントCG不足や立ち絵の使い回しがやや気になるところではありました。予算と直結するところだったので致し方なかったというところでしょうが。音は音楽は普通に合っていたと思いますし、それよりも効果音がきちんと作ってあってよかったなぁという感じです。プログラム……はかなり重たかったけど。行っている処理にしては重すぎるんじゃないかと思います、はい。レイヤー合成やスクロールなどはもう少し気合い入れて最適化してほしいものです。
総じて、よいお話でした、ええ本当に。単なるエンターテインメントてはなく、想いがほのかに伝わってくるのが好きでした。
2006/04/30(日)ゲーム「ToHeart2 XRATED感想」
最初に
ToHeartの生みの親である高橋龍也さんはすでにLeafにはいないわけで、その辺どうなのかなあと期待と不安を抱きつついざプレイ開始。やってみて最初にまず懐かしい、ひたすら懐かしい。BGM*1が懐かしすぎです。あれから10年近く経つんですね(遠い目)。当時、高校で大流行したのを思い出しました*2。こう言ってはなんですけど、掛け合いとかムードとかちゃんとToHeartしてるなぁと。いやほんとよく研究してます。と詳細は立ち入らずとりあえず攻略キャラ別に。
ノーマルエンド(攻略なし)
3月から5月のGWの修学旅行前まで、2年生などなど、ありとあらゆる模倣に思わず苦笑いしたぐらいですから、初代ToHeartにおいて「僕たち友達だよね」で終わる有名な雅史エンドも模倣してくれるだろうと思ったら案の定、やってくれました。うむ満足です。
柚原 このみ
初代でいうところの神岸あかりに相当する幼なじみキャラ。キャラの造形が狙いすぎ(見た目と声と性格と)なのは別とすればシナリオテーマ的には『幼なじみからの脱却』で、ある意味あかりシナリオの焼き直し。焼き直し……というより2番煎じ。決してシナリオの作りにどこか決定的な欠陥があるわけではないのですが、あかり(のシナリオ)と比較してしまうとあかりシナリオ(by高橋氏)のほうか1枚も2枚も上手という感じです。
向阪 環(こうさか たまき)
ネット界隈でタマ姉(ねえ)タマ姉というのが気になってたんですが、あーなるほど、こりゃまた強烈に魅力的なキャラクターですね。人気でるのも頷けますね。タマ姉は小悪魔的なキャラクターで、いたずらっ娘でおネエさまとまあほんとあるラインにはストレート直球ど真ん中。
なんですけど。シナリオテーマ的にはやはりこのみと同じ「幼なじみからの脱却」になるのかな。しかしどうやって山を作るよーと思ったら、タマ姉を慕っている女子3人組という*3百合百合ですか、そうですか、そう来ましたか(笑) という感じで。まあよく出来たけどよく出来てたなりの普通でした。
十波 由真(となみ ゆま)
マウンテンバイクで突っかかってくる、喧嘩っぱやい。でも本当は、自分の人生を見つけようと必死でもがいてたという、テーマ的にはとっても好きなシナリオです。ただ、シナリオが5月に突入してもいっこうに終わる気配を見せず……一体いつまで続くんだこれは……と、ONEのシナリオを思い出してしまいました。なんかそういう感じの延長戦の繰り返し。
ツインビルの真ん中で、ガラスに挟まれた二人という構図は、WHITE ALBUMの美咲シナリオの、公園の金網越しという、ある意味もっとも象徴的なシーンのオマージュなんだとおもいますけど、でもそれってガラスだと意味ないんだよね。
シナリオ○(やや(かなり)説教くさいかもしれないけど、個人的には好き)、演出もよく頑張ってるんだけどやや(かなり)見当違い。ラストあのなんも中途半端な終わりはないでしょうという感じでした。
ここまでの感想
いやほんとよく研究して作ってるけど、現時点では前作を越えてないというか。下手によく出来て、下手によく似せてあるだけに、初代を知ってるとどうしても差を感じてしまいます。初代(の高橋氏)ならこのシーンはここで切るよなーとか、場面転換だけでこう語るよなーとか、そういう越えられない壁みたいなものをやや感じ中。
初代では、あかりシナリオや委員長シナリオが印象的なんですが、あれの良さってのはシナリオ構成云々よりもテキスト表現を含めた演出の良さってのがあるんですよね。だから内容分かってても再度プレイするとやっぱりいいなぁと思ってしまう。
だとしても、十分面白くはできてると思います。Leafも社員増えて収入がピンチでヤバゲでお金欲しくてメディアミックス前提で作ったとしか思えない続編ですが、いまのところはまあまあではないかと。
小牧 愛佳(こまき まなか)、委員長、いいんちょ
やたら主人公の女性が苦手という部分が強調されていたものの、基本的にはよく出来てて、ラストのサラクシーンもしてやられた感じ。面白かったですね。もっと印象深く演出してもよかったとは思いますが、まあこういうライターさんなのかなぁという感じです。テキストを読んでいても、十波シナリオと同じ人が書いたんだなあってのが分かる感じの、物の見方や考え方みたいなのが出ていました。結構、自分は好きな(近いところがある)タイプですね(苦笑) 同じライターのくさりが気になるなぁ。
十波シナリオ、小牧シナリオ共にいろいろな意味でKeyっぽさ*4は否めませんが、それはそれでいいですねぇ。たださぁ、小牧シナリオのテーマがどう見ても灰羽連盟の劣化コピーと感じたのですけどこじつけ?(汗) 小牧、ちまたでは大人気みたいですけど、個人的には十波シナリオのいいんちょの方が好きですね。「だめだよぉ~。ケンカしちゃだめだよぉ~」とか、いい味出してます。とはいえ、比較的よく出来てると思うんですが。
細かいことですが、他のシナリオではテキストに対して収録されている音声に結構工夫が見られたのに(「……」でも声があるとか)、こと小牧に関してはテキストそのままという感じがしました(特に後半)。勿体なかったです。
あと、PC版追加のHシーン……のために、PS2版の「3時間後」が何事もなく翌日になったり、というかさっきまであんたら妹の心配してたんじゃないのか……という感じで、やる気ないのかもうちょっと追加する場所考えようよという感じでした。
ルーシー・マリア・ミソラ
無茶苦茶とっつきにくい変なキャラ=るーこ(ルーシー)が、一転して親しくなるといい感じになるというシナリオ。自称宇宙人なので、宇宙に返してあげないといけないんですが(苦笑) 突拍子もない(節操がない)というToHeart的な特徴を継いだキャラなのかも。
全体的に演出中心のご都合主義全開の展開。ご都合主義ということに目をつぶれば、話筋は良いと思います。プレイヤーに対する情報の与え方や場面場面での見せ方、話しの流れの構成という意味では(心理面でも事実面でもご都合主義ということを除けば)非常によく出来ていて、その辺は由真/小牧(愛佳)シナリオよりうまい。そういう意味では面白いです。
ですが、その一方で地の文章が非常に浮いています。今までプレイしたこのみ/タマ姉シナリオ(菅宗氏)、由真/小牧シナリオ(枕流氏)は、主人公の見せ方に差があるにしろ文章という意味でそこまで違和感は感じなかったのですが、このるーこシナリオ(担当は三宅章介氏)は主人公としての地の文章が明らかに違うという印象を受けます。ダメ主人公には変わりないのですが、若気の至りだとしても手に負えない感じのダメさ、軽い感じのダメさ、落ち着きがない……とかいう印象です(主人公が)。またキャラを萌えさせる感じの書き込みも苦手なように感じました。
細かいこと。
- ルーシーシナリオに入ると、4月中から別モードに行って帰ってこれなくなります。5月を長引かせる由真/小牧(愛佳)シナリオよりと比べると……どうだろう。移動選択がでない分、こっちのほうがもはやToHeart(のシステム)じゃない気もする。
- もっとコンパクトにまとめてしまってよかったと思う。ToHeart(初代)のマルチみたいに。
- 宇宙人であるという虚構をあの舞台設定で表現して大きなボロを出さなかったのはうまい。
- 全体的にはよいけど、画面のカラー変更とか(青っぽくとか)若干演出過剰。もうちょっと抑えて使って(出し惜しみして)いいと思う。
- あのラストシーンは必要最小限情報で締めくくるというライターの意図は汲むにしろ(このラインは上手い)、今回のToHeart2という舞台ではまったくミスマッチ。
- よく考えると、全体的な演出方向がキャラクターではなく「宇宙人」という設定のライン描写に行ってしまっているので方向違い。
結局のところ、ライターさんがToHeart2のラブコメという世界観に向いてなかったと思われます。……でもさ、三宅さんってメインライターなんだよね。
久寿川ささら
ネットで評判最低のささらです、はい。んー「悪くないじゃん(笑)」。そりゃたしかに、両生類好きみたいな奇をてらいすぎてすぎて失敗したキャラ立てとか、主人公がダメダメすぎていわゆる鬱ゲー並なもどかしさを味わせてくれるとか、宝探しをクライマックスにしておけばいいのに、唐突にささらの両親出してきたとおもったらぼくらの七日間戦争始めちゃったりとか、色々ありますけども、えぇ(笑)
ライターは三宅氏。地の文は相変わらず喋りすぎ(説明しすぎ)で、会話もけっこー説明しすぎな感じな感じでした。ToHeartという世界観には合わないんじゃないかなぁ、とは思いつつも、会社方針として前作ToHeartとキャラ的には縁を切ることとか、違うものをという要求があったみたいですから、そういう意味では一番「違うもの」を「真面目」に作ってるのかもしれないな~と好意的に解釈もできます、はい。
思いつくところを箇条書きにすると。
- テーマ的にもキャラ的にも、すごい真面目に書きすぎた感があって良い人には良いんだけど、ToHeart2をやる人はおそらく求めてなかったんだなろうなぁ。
- そしてその関心のテーマもささら個人の問題に焦点を当てた前半と(宝探しまで)、そうなった原因である環境(両親)に焦点を当てた後半に描写と構成が分散したのが難点。どっちか一本に絞ればよかったかと。
- 話の組み立て方はラノベ作者で有名な乙一流のプロットの作り方を彷彿と……いやまあ基本なんだけども。
- テーマに対して若干、構成・書き込み・演出不足。若干なんだけど描き切れてないよなぁーと感じてしまいました。あと投げっぱなし感も。
- ラストのラストが、まあ恋愛ラブコメでは納得してもらえないかもねぇ(初代の志保みたいに)。
- 色々なキャラ総出演で総まとめ的な狙いなのかもしれず。最後にやるべきシナリオかも
でまあぶっちゃけどうだったのよ? と聞かれれば全体的には好きですよ。ラストもベタですがああいうの好きでして、ええ(苦笑) でも、良かったと言い切れないのがなんとも口惜しいところで、そしてプレイヤーを選ぶというのもまた間違えないところです。結論としては一緒ですね。ToHeart的ラブコメにこのライターさんあまりは向かない。age的ラブコメならたぶんすごい向くと思う*5
というわけで結局いつも通りでした。というか若干飽き気味ですが、この際だから全員クリアかなぁーという義務感でゲーム。何かものすごく間違ってる(笑)
笹森 花梨
ライターはまるいたけし氏。オカルト研究会で宇宙人どうのという、非常にどうでもいいキャラでした。やってみました、やっぱりどうでもいいシナリオでした。山火事食い止めました、チャンチャンってオチはまあたしかに普通だと思いますよ、この手のゲームとしては。
しかして、ここまでプレイしてきて、ここまで普通じゃないキャラがたくさんいると逆に浮くというか物足りないというか(苦笑) どうでも良さではタメを張る初代の志保のPS版ぐらいみせろーぐらー
姫百合 珊瑚/姫百合 瑠璃
百合でした。間違えなく百合でした(終了)。どうみても○学生な絵とか、メイドロボまで出てきて○な展開とか、ある意味ファンサービス旺盛なシナリオでした……が、それはとりあえず置いておいて。
悪くなかったですが、ライターは三宅氏。主人公が変、という感じはありませんでしたが、台詞がやたら饒舌……。シナリオは悪くないんですけど、説明過剰という感じというか、長文独演会しなくても分かるシナリオにしておこうよというツッコミを入れつつ、それにしては序盤~中盤までのシナリオの長さにかなり飽きつつという感じでした。
テーマ的には「盲目的な交友」なのは自分も考えたことありますし、多分よくあるものなんだと思いますが、そこからの脱却……ではなくて「そのままでいいじゃない」ってオチは(ToHeart2という作風的に)いかがなんだろうか、とはおもった。
ぜひ枕流さんに書いてほしかったなぁ、このシナリオ(笑) さもなくば(Keyを辞めた)久弥直樹氏あたりだと強烈な詰め込みが描きそうで、それはそれで想像できて面白い(笑)
2004/10/16(土)同人ゲーム「夏の燈火」感想
佳葉シナリオ
正直なところ、「ここまでのシナリオとは!」と出来の良さにびっくり。短くて、見せ場がたくさんあって、おまけに(過剰に)あざとくなくて、それでもこれだけのものが作れるのかと、しかも同人で……と(流通だけ同人な会社もありますが、こちらは違うでしょう)。
シナリオの読む順番が決まっていて、初回プレイ時は佳葉(かのは)シナリオのルートに入るようになっています。
たしかに感動を謳うだけのとこはあります。人の生死を扱うことから生まれる感動であることは間違えないのですが、よくありがちのパターンとして「死ぬこと」の恐怖や不幸を持ってくるのではなく、違うところを主軸にしたことがあざとく感じさせなかった要因であろうと思います。
テーマとしては『生きることとは何か』。日常の中で、ただ他人に生かされ、ただ惰性で生きるだけではなく、自ら「意志を持って日々を過ごせ」というものだと解釈しましたが、しかし残念なことに描ききれていないように感じました。問題はシナリオの構造です。
シナリオの構造は非常に良くできていて「感動することは間違えない」一方で、そこに添えられたテーマを考えたときやや問題があると感じられます。シナリオ中に「ただ惰性で生きる状況」と「自ら道を切り開いて生きる状況」を対比させる場面が存在しない、シナリオ中の言葉を使うならば「どういう登場人物のどういう状況が道を切り開いて生きる状況」なのか分かりにくい、明確でない、具体的でない。常套手段ではありますが、テーマを描くときに最も有用な手段はコントラスト(対比)です。それが明確見えてこないため、言いたいことは分かるし共感もするけど、実感は沸かないという不可思議な状況を生み出したように感じます。
また、佳葉を Kanon のような手法を用いてキャラゲーとして色付けし、そのため幼少期における「けっこん」という約束(まるで真琴ですか)や「桜硝子」といってアイテムが出てくるのですが、その約束をしたり桜硝子を渡すシーンの作りに唐突さが残り、そのため後々効果的に作用させることができていないように感じます。例えば、桜硝子を渡すためのエピソードであるわらしべ長者の話は「目的そのものが桜硝子を渡すこと」になってしまっています。たまたまそうなってしまった、という状況を設定する場合、エピソード全体は全く無関係なことであるのに、そこで起こった出来事の一つでたまたま桜硝子を渡せていたりした方が、良かったように思います。
シナリオ構造を冷静に見てみると、徹底的に不要なエピソードと冗長性を排除してしまったがために(注釈:これはこれで大切なことです)、フリの出すタイミングがほぼすべてイベントの直前に来てしまっているのが、(他が良いだけに)非常に残念です。
本来、エピソードをずらしつつ互いに重ねることでフリを効果的に構成出来るのですが、本シナリオの場合、全体がほぼ時系列に連動して並んでいるためそういう構成が難しく、結果的に「前フリ → 直後にエピソード」の繰り返しになってしまったのが惜しいとも言えます。最たるものは、主人公を現世に戻す儀式前日のオトメの言動でしょう。あれが数日前だったらなぁ……。
湶シナリオ
シナリオテーマは「万物への尊敬」と「他者との友愛」。湶シナリオなのか? という感じすらする、全体の伏線回収と妖怪対人間という戦いのシナリオです。互いに理解し合えぬ「人間」と「妖怪」の対立構造を主軸に添えて全編描かれるわけです。戦闘シーンの緊迫感は概ね出ており、作りとしてはこちらも決して悪くないです。悪くはないんですけど……ね。
他所(よそ)でも指摘されていることですが、テーマに対する絶対的な書き込み不足がまずあります。これは何もテーマに限ったことではないのですが、分量が足りてない、またはあえてキャラクターやエピソードを掘り下げていない。そのことがまたテーマを分かりにくくしています。
そしてもう一つの難点は、テーマが多すぎて一つに絞られていないことです。それは妖怪の親玉である玉藻前(たまものまえ)が、水鏡神社の前での戦いで人々へ残す『セリフの異様な長さ』にも見て取れます。悪く言えば、ほとんど音楽とムードでねじ込まれた感じすらするこの台詞は、言いたいことが多すぎて主軸がどこなのかよく分かりません。シナリオで描ききれなかった部分を言葉で代用しているため、こうなってしまったのではないでしょうか?
湶シナリオにおいて、泥沼とも思える人間対妖怪の対立軸の終止符、最終的にいかなる結論を提示したいのか全く見えてきません。結局どんな結末を提示したいのか、それか分かるのは本当にラストのラストシーンに至ってからなのです(以下ゲーム本文より引用)。
俺達は、ずっと争っている。それは、互いに損得があったり……思想の違いであったり、生きるためであったりするんだ。そうして、悲しみが生まれてゆく。意志があるものとして、争いはやはり避けられないのだろう……(略)「恨み」……その感情があるため、話し合いで解決するなんてできないこともあるんだ。(略)
俺達のような、力を持たない存在だからこそできることがあるんじゃないだろうか。例えば俺と白児が仲良くなる……俺と、玉藻前が仲良くなる。玉藻前と湶が仲良くなれる。こんな小さいことが集まって。……いつか、俺達は「恨み」から乗り越えることができるんじゃないだろうか。
この言葉の示すテーマは大きく、例えばこれは今起こっている戦争や、過去の戦争が引き起こした対立や軋轢についても何かを提示しているとすら思える。個人的にもとても好きです。ですが、このラストシーンの勿体ないところは主人公一人が勝手にそう想ってるだけだということです。物語の結論ではなく、主人公の極めて個人的な結論に過ぎない。誰一人としてそれに付いてきていないし、賛同していないし、実践もまたしていない。そうなってしまった要因は、やはり、シナリオの構造とテーマが完全に混ざり合っていないことにあります。
例えば、陳腐ですが、主人公が白児を守ったり、その逆だったり、玉藻前と白児を敵視する大勢に対峙して主人公か身を張ったり……と。結局、大枠としての対立軸と個人的な好感(友好)が、(主人公にとって)天秤にかかるような状況設定をしてやるべきだったのではないか思うのです。よくよく考えると、すべて周りに振り回されていて、主人公の関与せざるところですべてが回っているのに、未来論を語られたところで……という感じでしょうか。湶が最後あの状況になって主人公が選択するという場面を見たとき、どうしても正しい方の選択肢を選ぶ説得力(主人公の心情としての説得力)が不足しているように感じてしまったとも言えますね。
しかしながら、大枠の対立軸という設定を用いながら、どちらかがどちらかに対して譲歩する、または突然悟るという(最近のアニメで良く見られるような)チンケなオチがつかなかったことは高く評価したいと思います。
総合感想
何が足りなかったと言えば、一番足りなかったのはそこに居る人たちの『想いの掘り下げ』だと思います。人はエピソードよりも「想い」で感動するのですから。例えば、主人公たちの過去、佳葉の過去、玲司の過去、オトメの過去、玉藻前の過去など、もっと、事実を述べる以上の感情的な掘り下げ、具体的なエピソード描写があってもよかったのではないかと感じます。
もっともこれだけの物が作れる人が気づかないハズがありませんから、おそらくはあえて掘り下げなかったのでしょう。作品全体を重たくせずあくまで娯楽作品に止めたかったのかも知れません。ずしりと重たく後を引く作品もまたそれで良いのですが、作品自体の娯楽性を考えたとき程々にしておく選択もまたあるべきです。最近の流行(内面描写の省略と状況説明の強調による読者共感)でもありますしね。ですが、それだったら違うテーマで良かったのでは、とも感じます。何といいますか、テーマを描きたかったのか、娯楽作品(キャラゲー/萌えゲー)を作りたかったのか、どっち付かずになっている印象があるわけです。
それでも、この作品の凄いところは、そういった想いをほとんど掘り下げることなく、これほどまでに感動させたということでしょう。しかも、さほどあざとくなく、です。
さてその他ですが、音楽が良かったなぁ。どの曲とは挙げませんけどね。ただちょっとBGM全体を「静」と「動」に分けたとき、後者ばかりが目立ったのが少し残念。木は森に隠す物ですが、木を目立たせるときは丘かどこかに植えてほしいなぁという感じです。例えば『湧水』という曲など印象的なシーンで使われるのですが、大盤振る舞いをしないでもっと使うシーンを絞れば、より効果的だったのではという感じがします。まぁあと音楽といえば、余談ですけど、ある作曲者の録音環境が悪いのか、ホワイトノイズがほぼ全曲に載っているのが非常に勿体ない。曲はとても良い物が多いだけに非常に勿体ない。
それと細かいことですが、ガラスにヒビが入るときに、割れる音を使うのはいかがなものかと思いました。あと……、絵に関しては特に感想を述べる能力がないので省略。システムはもっと完成度が高いといいなぁ、という感じです(ミュート中にかすかに音が聞こえるのが残念)。全体的に、制作の中心人物である江本さんの力をまざまざと見せつけられたと付け加えておきます。次回作も期待できるでしょう。
個人的には
私は絵の枚数やら何やらにはこだわる人ではないので、佳葉シナリオをプレイしたあと率直感じたことはただ一つ、『これほどまでに凄い作品が、どうしてもっと話題になっていないのか?』でした。エロゲスケープの評価も80点台ですし。同じシナリオで商業ルートで制作・販売されていたら、どうなったかと想像してしまいますよ、ほんとに。逆に言えば(同人流通だと)『これだけの作品を持ってしても話題性はこの程度になってしまう』ことの方が驚きだったと言えます。
作品として好きですし、テーマも好きですし、シナリオも(作り方も)好きですし、全体的に非常に良くできています。そういう意味で好きで良いと思う作品ですが、破壊力が無いと言えばそうなのかも知れません。ですが、それでも、もっと口コミで広まることを願わずには居られません。ネタバレ全開なので先(プレイ前)にこれを読む人はいないと思いますが、もし居たらぜひ一度やってみてください。損はしないと思います。*1
2003/04/04(金)ゲーム「銀色 -silver-」感想
シナリオ関連スタッフ
スタッフ | 担当 |
---|---|
片岡とも | 一章、五章半分、錆。ディレクター |
ヤマタカユウキ | 二章、五章半分。新人 |
高嶋栄二 | 三章 |
ALFRED | 四章 |
ぶぐつ | お手伝い(?)。演出大半=スクリプト書き |
プログラム
システムは御存知の方も多いと思いますが、フリーで公開されている NScripter をほぼそのまま使ってます。実際に、最新版の NScripter をコピーして起動すると実行できます(笑)銀色のために特にカスタマイズされた様子もなく、ただのロイヤリティ契約だと思われます(この NScripter って上手いなぁ~なんていつも思うんですよね。同じことしたいなぁとか)
NScripter って、以前から知ってたりもするんですが。システム的には Leaf の 雫、痕 のシステムのバージョンダウン版といった感じです(本音)。分かってる問題としては、回想が上手くいきませんね(恐らくプログラムが銀色のスクリプトのような使われかたを想定していないと思われる)。画面の切り換えもバージョンが少ないですし……(銀色で使われてないだけ?)。ただ、下手なソフトハウスのシステムよりよっぽどマシなのが作れるのですが。
私の(プログラムの)基準って、Leaf の にのまえはじめ(一一)さんや、アリスソフトの WAO さんだからマズいのかも。Leaf の(今もまだここで働いてるかは知りませんが)中尾さん(まじかる☆アンティークなど)も書けるプログラマですね。こういうのと比較すると、まだまだ作りが甘いですね。ここら辺はプログラマでないと分からない領域ですけど(データファイルが簡易なのはわざとかなぁ……。システムの柔軟性の高さはすごいですけど)。
もっとすごいのが、銀色のシステムを管理した人。インストールできる形式を作成した人というべきでしょうか? これはすごい。本当にすごい。NScripter って画像データとかを纏めて1つのファイルにする機能かあるんですが、このとき余計なファイルを一緒に固めてる。シナリオファイルでけならずプログラムまで一緒に入ってるというのはなんともはや……(^^;;
あと、4章の声がやたら少ないなぁ~と思ったらおまけテキスト見ると(以下引用部)、
実は四章のボイスも本当は全部ありました。
…でもやはり容量の関係で入れられなかったのです。…とても残念です(泣)
となってまして。ファイルを直接見ると一部入ってますね。これを読んで「もしや」と思って WAV ファイルを開いて見ると、録音したまま何も加工してない。ADPCM で圧縮するとか、NScripter でそういうファイルが扱えないなら、ある一定レベル以下の音をカットオフするだけで圧縮率が飛躍的に向上するのですけど……。知らないとは恐ろしい……。
ゲームシステム
「映画をみるように楽しんでください」とのことですけど。小さい文字はTV出力してやるときには向きませんでした(違)。映画のように 16対9 のワイド画面で、テキストは字幕を想定してるんですよね。ムード出てたのかなぁ……。元の画像は 640*480(4:3) で描かれてるのだから、普通にそのサイズでよかった気もしますが。同じテキストで、画面表示を変えて比較してみないと分からないところではあります。
ただ横長画面のせいでキャラ絵がみんな斜めになってましたね(立ちキャラ除く)。描く人は大変だったんじゃないかなぁという気もします。あと立ちキャラ、2人立たせてもよかった気がするんですけど。NScripter はそういうこと出来ないんだっけか?画面フェードのパターンが少ないのも、ゲームとしてはもう少し凝ってほしい点ではあります。NScripter には半透明機能(αブレンド機能)もあるのですが、使い方が面倒なせいか(私はそう思う)積極的に使われてる様子はありませんでした。
何度も書いたことですが、一本道のシナリオにほとんど意味を成さない選択肢。批評サイトとかを眺めてると結構書いてありますが、やっぱりゲームじゃないです。でもシナリオを読ませるという意味ではこれでよかったのかも知れませんね。しかし、どう頑張っても声つき紙芝居……なんですよねぇ。中途半端にゲームにしてシナリオを殺す危険性は確かにないのですけど……。
ゲームによっては選択肢が厳しくて、うまく ED が見れないということがありますが、どっちがいんだろうってのは難しい問題のような気がします。シナリオ重視のゲームで、従来のイベント型ゲームのように難易度を設定すると非常にバランスが難しくなりますからね。個人的意見ですが、痕 のようなものを除くとシナリオ選択型というのはその利点を生かせないように思います。その点ゲーム性を捨てた銀色は、選択としてアリでしょう。
音楽
基本的にはよかったです。なんかワンパターンだったり、差し障りない明るい曲が最近ゲームとかで多いのですが(私の気のせい?)、まぁ聴かせる曲を聴いた気がします。でも、もっと頑張ってくれるといいなぁーというのが正直なところ。もっと聴かせる曲を作ってもいいと思いました。曲はいいのに上手く纏めちゃって感じがして、殻というか定番というかをもっとぶち壊して欲しいです。
OP曲、ED曲についてはまぁまぁ。というのは Key や Leaf には負けます。負けます、どころか大敗です。勝ち目なしです。ラストシーンはED曲と共に流れるのですが、ED曲のインパクトや曲の持つ世界観が弱いために少し勿体ない感じがします。酷評するならば形はよい音楽ですが、よくよく聴いてると味が薄い。その味すらも、どこかで聴いたことあるような曲調ばかりで、その点今一歩と言わざる得ません。
声
3章が一番演技まともだったなぁ~と思ったら、おまけテキストで3章ライターさんが「声優に恵まれた」って書いてました。やっぱな……という感じ。私も(おまけ参照)2章の人の声質が好きなのですけど(逆に5章の声優さんの声質は……)、いかんせん(シナリオが)演技しづらい & 下手というか。あのテキストじゃ演技する方もやる気なるなる可能性はありな気が…… >2章
全体として演技は上手くないです。正直なところ「弱小ソフトハウス(他意なし)の出すゲームの声はこんなもんか」と。どういう意味か書かなくてもわかるでしょうが、金と力の問題です。こればっかりはしょうがないでしょう。個人的には、例え下手でも新人でも演技が好きな人を選んで、ゲームを作るという情熱を理解できる人が居ればいんですけどね(逆に情熱持って作らないと無理ですが)。どっちにしろ金がないと、録音に時間かけられませんから……(以下略)
シナリオ(のメインキャラ)をそのまま録音したようですから、それでも大量の時間がかかったでしょうねぇ~。他サイト見てると「どうせ声を入れるなら全部を」って意見もありましたね。そこまですればより映画みたいになりますね。いいか悪いかは別として。3章の夕奈に声があったらいいなぁと思ったもしましたが、もしあったらそれはそれは……。
えいごモード
本当にすごいゲーム。英語モードですもの。ではこれを英語の Windows で起動して……もダメダメです。メニューとかが使えないわけではなく、英語のテキストが全角文字ですから、シナリオの文字(英語文)が表示できません(笑)
サイト感想とか見てすごく納得したのを少し引用。「なんのために英語モードをつけたのかわかりませんが、ここまでやってくれれば文句はない」私も同感。ここまで無駄なことに、ここまで労力を注ぎ込んでくれるのは本当に素晴らしい。シナリオをいつでも英語に切り換えられたらよかったんですけど、まぁそれは無理な話で(NScripter をそのまま使う限り)。
で、銀色の英訳を、これから英語で食っていこうという友人に読んでもらいました。「意味は通じるけど、文法をがちがちに勉強した人が規約どおりに訳した感じがする」そうです。つまりネイティブな英語ではないと(これは気づいてる人も多いようですけど)。比喩や慣用句なども、本来なら日本語のそれとほぼ同じ意味の英語の慣用句に置き換えるのが適切だろう、というお話でした。自分なら違う風に訳す、と英文を見ながらいってました。但し部分的に(翻訳の)上手い部分もあるそうです。
日本の受験英語の例だということですね。音声については、素人(の私)が聞いても「がんばって喋ってますねぇ」という感じですね。余談ですが、英語モードを付けた理由は「海外では日本のゲームがただのHCG集と見られてるから」だそうです。ただ全角文字の「英字」なので海外では文字化け必須のようです。また海外サイトを軽く検索したところ、時々ひどいの翻訳があってそれが悪い要素となっているみたいなことが書かれていました。
おまけシナリオ
世界観や余韻やらを完全にブチ壊すすごいおまけです。ジョジョネタ×2、ドラクエネタ、White(前作)ネタという構成です。私はドラクエネタが面白かった。ジョジョは知りません。ドラクエネタは BGM や画面まで真似るという気合の入れようで、すげーことしますねぇ~。町の風景もどこかでみたぞーという。
「おまけが面白い」というのはずっと聞いてて、確かに面白かったのですが。けども他のサイトとか見てると「面白くない」という意見もありまして、変な話ですが私も同感ってところがあります。ドラクエネタ含め、内輪すぎたというのはあると思います。ドラクエネタは面白かったと書きましたが、正確には「ぱ*ぷんて」「レベルアップを言ってみた」「PSG風BGM」以外はあんまり面白くなかった。
余韻を壊してしまうのは、確かに勿体ない気もします。もう少し穏やかでも、おまけシナリオを作れたと思うんですけど……。あと、誰にでもわかるネタね……。
シナリオの作られ方
スタッフロールでディレクターとなってるところから恐らく片岡とも氏がメインライターなんだと思いますが。とも氏が全体の構成を作って、キーとなる1章、5章は実際書いてるわけですから。とすると2章、3章というのは銀色からは少し外れた物語になってるわけですね(特に3章ですか。2章は久世家が出てますし)。
1章から4章まで「平安」「鎌倉」「大正」「現代」という流れだそうで。全体のなかで2章、3章に求められたのは何かなぁ~とか考えてみるわけです。思い当たるものって1つで『銀糸の効果』以外の何物でもないわけですね。どっちも使用例。全体を通しての「あやめ」というキーワード、(2、3章の)どちらも生きているわけではありません。
あと決まってたと思われるのは、銀糸の効力は絶対だ……ということでしょうか?1章、4章、5章では願いに大して特に対価を支払った様子はありませんが、2章、3章では大きすぎる対価(引き換え、代償)を支払っています。4章では願いがそのまま不幸なのですけどね……。「あやめ」以外の人が願うとダメだとか……
で、実際にスクリプトに起こしたのは、つまり演出をしたのはぶぐつさんがメインのようですね。片岡とも氏のやった1章5章は除いて……ですが。この二人が全部演出をやったように思われます。個人的にはぶぐつさん頑張れ……という感じだったりするのですが(次項に続く)。
ゲームの作られ方
これも推測なのですけど、片岡ともさんが全体のシナリオ構造を起こした後に、各シナオリライターがスタートして、シナリオが上がってくるにつれCGがスタート。シナリオが完全に上がった頃に録音がスタート。英訳といい、誤植の少なさといい(気付いた誤植はなし)念入りに見直しされてるようにも感じますね。
こう考えてくと、実際のスクリプト書きは大変だったのではないかと思うんですよ。作業的に一番最後になってる。で、1章とか(とも氏の書いたもの)を除くと(シナリオの文章が)演出されること(=ゲームテキストとなること)を考えられてないわけで、それであそこまで頑張ったのは大したものではないかと思えてきます。いやほんと頑張ったと思います。とくにぶぐつさん☆
片岡ともさん以外の脚本は、脚本じゃなくて小説です。テキストを半分抜き出して利用したショートショートを某所で読んだんですけど、『小説』として全く違和感ありませんでした。別に修正とかされてないんですよ。でも違和感ゼロ。ONE から抜き出したゲームテキストがあったので見てみましたが、大半が台詞で話の転がしかたとかも「あっ違うなぁ」と思いました。
演出か? シナリオか?
Key の批評とか読んでると、人によっては「演出が上手すぎるから一度捨てるべき」と言ってる人が居て、あぁなるほどなぁとか思ってました。銀色1章なんかはすごくいい話で、感動した人も結構いるようで、私も好きだったりします。言おうとしてたこと、表現しようとしてたこと……とか私も書いてみたりして。「~のこと」って繰り返しの韻を効果的に使ってますね。
抑えた演出なんて評価もあったけど、ちゃんと演出をしてました。銀色というストーリーに合った演出ですね。これはこれでらしくて良いと思います。ただ個人的にはもっと演出されている方が好きなのですけど。これは5章にも言えますね。文章もやっぱりちゃんとゲームになることをある程度考慮して書かれてましたね。1章だけは……。
ねこねこソフトとしては、どっちがいいのでしょうね?このままシナリオだけで読ませるようにしていくのか、演出も加えていくのか? 私はこのシナリオに綺麗な演出というのを好みますが、実際やってみたらどうなるかは分かりませんね。下手な演出をするとぶち壊す可能性は大ですから(^^;;どっちに進むつもりなのか。非常に興味深いところではあります。
私としては、今後演出屋さんが加わるかどうかのような気がしますけどね。そういう体勢が整うか、整わないか。というのも、現状では、音が先についててシナリオを演出段階で直せないんですよね。下手に切り取ったり台詞変えることができない状態になってますから。ぶぐつさんは大したものだと、いやほんとに。努力を買います。
1章、5章再考
「生きた証が欲しい」とかはやっぱりフリがないね。「あやめ」と命名するシーンはフリがありすぎて、バレバレ。あくまで演出的に考えると……ですけどね。でも表現しようとしてることは、すごくいいなぁ~~と思うんですよ。
「~~のこと」という同じ韻を踏んで、「闇の世界」のシーンを何度も繰り返し入れて、そういうのも考えてるなぁ~という感じです。私特に、前者は好きでしたねぇ~。「~~のこと」。5章にも出てましたけど。画面(シーン)の切り換え方も独特ですね。ちゃんと考えてるなぁ~って感じです(というより他の章は考えてない)。
5章でちょっと気になったのは、「花を見に行こうか」というのが錆の前と後でダブってるんですよね。わざとなのかは不明ですけど、ちょっと疑問でした。ついでに些細なことで、これはどの章ってわけでもないんですけど「この」と書くべきところがいくつも「あの」になってましたね。
これは脱線だけど4章のカウンセラ。居そうで怖いですねぇ~、妙にリアルだったのはもしかして経験あり、なんて思ったりしました。
全ストーリー再考
さんざ言われてることですが、4章は中身が非常に薄いですね。トゥルーエンドで、1~3章の平和な情景が浮かび上がりますが、あれはなんか根拠のないハッピーを見せただけって感じがしますね。夢……なのかな? 演出としてはアリだと思いますけど。
錆の様子を見て、銀糸は2章の神社に奉納されたのか? とか思ったのですけどねぇ。それ以前に1章で使われてるわけで。1章では荷物は運びが襲われて、そのときに落とした朱い銀糸を名なしの女(あやめ)が拾って。で2章で奉納されるときには銀糸になってるわけですけど。3章のペンダントの関連性もなんだろ? って感じですかね。4章は、3章と同じ店と考えられないこともないわけで(こじつけ)。
ちなみに、専門家(笑)に聴いたところ銀は錆びると黒っぽくなるそうです。鉄みたいに赤くはならないそうなので、銀糸が朱くなってたのは錆びたわけでなく染まってただけですね。なぜその色が落ちたのかは謎ですけど。錆びた銀は、熱すると還元できるそうです。空気中とか酸素のあるとこで熱したらダメみたいですけど、まぁ錆びてたなら戻る方法はあるかなぁ……とか。
4章と5章を通して『銀色』という物語は綺麗に閉じていて、見事いう感じですね。ここのところすっきり終わる物語をず~~~っと見てなかったもので(某鍵)、綺麗でした。
けどすんなり終わったのて、そのまま印象にも残りにくかった感じが。Kanon とかは第3者が想像の余地(もっと言えば2次創作の余地)を残したが……という意見もあるようです。閉じない方が盛り上がる(某*ヴァしかり)。私としては綺麗に閉じてる方が好きです。ただ、余韻を残すということも少し考えたらいいかも?(余韻=謎ではない)
片岡ともさんが一番実力あるような感じ。まとめたりとか。2章のヤマタカユウキさんは、アイデアは最高。ただ技術が……。次に期待します。3章の人はいろんな意味でがんばれー、と(笑)。4章の方は……次がんばれー。今回は薄すぎ(短すぎ)。
そういや2、3章はなくても……って意見もありました。作品という流れというかとしてはあった方がいいかも知れません。いまいちまとまりのなさは否めませんが。私は続けて5つの章をやってませんから(多分私には時間的に無理)。銀色という作品を楽しむためには、一気に最後までやった方がいいでしょうね。2、3章でどぼんと落ちたムードがあると、ラストがより爽快に映るでしょうから。
テーマ性
2章は村人のために死んでいく人間の物語。3章はすれ違う姉妹の物語。それぞれ、そりなにあったと思うんですよテーマは。願いを叶えることの不幸……とかその周辺だと思いますけど。どっちもそうでしょう? 願いが叶うには代償が必要だ……って。
1章は一番強烈で「生きた証が欲しい」=「わたし光ってた」という思い問題を投げかけてます。ちゃんと生きてた……。生きてたってなんだろう、生きるってなんだろう……みたいな。この章は本当に凄かった。
その点4章は代償(という感じのものは)なし。特に感じるものもなし。5章は銀糸の悲劇ではありますけど。ネタ明かし以上に何かあったのかなぁ……という感じもしなくありません。
いい作品であることは間違えありませんが、1章がテーマとして一番良かったんじゃないかって気がします。銀色という作品自体よりも……という意味です。